all but
以下では「all but」という表現について、できるだけ詳しく解説します。
1. 基本情報と概要
意味(英語・日本語)
- 英語: “all but”
- 日本語: 「ほとんど〜」「〜を除いてすべて」
たとえば、
• “He all but forgot to lock the door.” → 「彼はほとんどドアの鍵をかけ忘れた(=かけ忘れる寸前だった)」
• “All but one of the students passed the exam.” → 「1人を除いて、全員が試験に合格した」
このフレーズは「ほとんど〜だよ」というニュアンスを強く含むか、「〜を除いてすべて」という意味をもつ、やや上級レベルの慣用表現です。
品詞
「all but」は連続した2語のイディオム・フレーズとして機能します。
「all」(形容詞/代名詞)+「but」(前置詞/接続詞)という組み合わせで、文中では副詞的あるいは形容詞的に働く場合が多いです。
活用形
「all but」はフレーズであるため、時制や人称などの活用はありません。
ただし、使い方としては下記のように続く語によって意訳が変わります。
- all but + 形容詞 … (ほとんど[形容詞]だ)
- all but + 動詞 … (ほとんど[動詞]しそう)
- all but + 名詞 … ([名詞]を除いてすべて)
他の品詞形
- 「all」単独なら「すべての」「全員」「全部」という意味の形容詞/代名詞。
- 「but」単独なら「しかし」「〜を除いて」という意味の接続詞・前置詞。
CEFRレベル目安
- B2 (中上級) 〜 C1 (上級)
上級者向けのイディオムであり、ネイティブでも文章中によく使われる表現です。リーディング中に目にすることが多く、英会話でも使いこなせると上級感を与えます。
2. 語構成と詳細な意味
語構成
- all: 古英語 “eall” に由来し、「すべて」「完全に」「全員」という意味。
- but: 古英語 “butan” に由来し、「〜を除いて」「ただし」「しかし」という意味。
これらが合わさって「すべてだが、しかし…」というニュアンスが生まれ、「ほとんど」「〜を除いて」という表現になります。
詳細な意味・使い分け
- ほとんど…
例) “He all but gave up.” (彼はほとんど諦めかけていた) - 〜を除いてすべて
例) “All but the smallest details are settled.” (最も些細な点を除いて、すべて決まっている)
よく使われるコロケーション(共起表現)10選
- all but impossible → ほとんど不可能
- all but certain → ほぼ確実
- all but finished → ほぼ終わった
- all but destroyed → ほとんど壊滅状態
- all but vanished → ほとんど消え去った
- all but gone → ほとんど無くなってしまった
- all but forgotten → ほとんど忘れられた
- all but guaranteed → ほぼ保証された
- all but lost → ほとんど失われた
- all but unstoppable → ほとんど止められない
3. 語源とニュアンス
語源
- “all” は「すべて」という意味の古英語 “eall” が起源。
- “but” は「〜を除いて」という意味の古英語 “butan” が起源。
両者が組み合わさり、歴史的には「すべて…しかし/〜を除いて」という構造から「ほとんど」「〜を除いてすべて」という意味が確立してきました。
ニュアンス・使用時の注意点
- 「all but」は口語・文章の両方で使われますが、少し上品・文語的なニュアンスを含むことが多い表現です。
- 会話でも使われますが、フォーマルな文章やニュース記事、エッセイでもよく見られます。
- “almost” との違いは、ややドラマチック・強調気味に「ほとんど〜」を表現するときに“all but”を使う傾向があります。
4. 文法的な特徴と構文
副詞的に使う場合
“S + all but + V(原形)” → 「Sはほとんど〜しそうだ」
例) “They all but failed the exam.” (彼らはほとんど不合格になりかけた)形容詞的に使う場合
“It is all but + 形容詞.” → 「ほぼその形容詞だ」
例) “It is all but impossible.” (それはほとんど不可能だ)前置詞的構文として「〜を除いてすべて」
“All but + (名詞/代名詞) + V…” → 「(名詞)を除いてすべてがVする」
例) “All but Tom left early.” (トムを除いて、全員が早く帰った)
フォーマル/カジュアル
- フォーマル: 書き言葉やビジネス文書でも使われる。
- カジュアル: 日常会話でも使用可能だが、ややかしこまった響きを与えることが多い。
5. 実例と例文
日常会話での例文(3つ)
- “I was so tired I all but fell asleep on the train.”
→ 「疲れすぎて、電車の中でほとんど寝落ちしかけたよ。」 - “They all but forgot my birthday!”
→ 「彼らは私の誕生日をほとんど忘れかけていたんだよ!」 - “We all but missed the movie because of the traffic jam.”
→ 「渋滞のせいで、私たちは映画をほとんど見逃すところだった。」
ビジネスシーンでの例文(3つ)
- “The deal is all but finalized; we’re just waiting for the final signature.”
→ 「その取引はほぼ確定しています。あとは最終署名を待つだけです。」 - “All but one of the candidates accepted the job offer.”
→ 「候補者のうち1名を除いて、全員が仕事のオファーを受諾しました。」 - “We all but completed the project before the deadline.”
→ 「締め切り前に、私たちはほぼプロジェクトを完了しました。」
学術的な文脈での例文(3つ)
- “The hypothesis is all but disproven by the recent experimental data.”
→ 「その仮説は最近の実験データによって、ほとんど反証されたと言えます。」 - “The ancient language is all but extinct, with only a few speakers remaining.”
→ 「その古代言語はほとんど消滅していて、話し手はごくわずかしか残っていません。」 - “All but a few species have adapted to the new environment.”
→ 「ごく少数の種を除いて、ほとんどの種が新しい環境に適応しました。」
6. 類義語・反意語と比較
類義語
- “almost” (ほとんど)
- “He almost forgot to attend the meeting.”
- ニュアンス: “almost”のほうが日常的・ニュートラル。
- “He almost forgot to attend the meeting.”
- “nearly” (ほとんど)
- “She nearly lost her keys.”
- ニュアンス: 短めでカジュアル。
- “She nearly lost her keys.”
- “practically” (事実上ほぼ、実質的に)
- “It was practically impossible to finish on time.”
- ニュアンス: 実質的にそうだった、という言い回し。
- “It was practically impossible to finish on time.”
- “except for” (〜を除いて)
- “Everyone attended, except for John.”
- ニュアンス: 除外する対象を直接示す。
- “Everyone attended, except for John.”
“all but”は“almost”“except for”両方の意味をカバーできるので、文脈に注意すれば強調的になるのが特徴です。
反意語
- “none but” (〜以外誰も〜ない)
例) “None but the brave deserve the fair.” (勇敢な者だけが見返りを得る)
“all but”の逆方向として「〜以外は誰も…しない」という言い回しで古風です。
7. 発音とアクセントの特徴
発音記号 (IPA)
- アメリカ英語: /ɔːl bʌt/ または /ɑːl bʌt/
- イギリス英語: /ɔːl bʌt/
アクセント・強勢
- 一般的には “all” の部分を少し強めに発音し、“but”を短めに発音します。
- 早口になると「オールバッ(t)」のように繋がって聞こえることがあります。
よくある発音の間違い
- 「but」の /ʌ/ を /æ/ (バット) のように発音してしまうケース。
- “all” の /ɔː/ が単なる /o/ や /ɑ/ になるケース。
8. 学習上の注意点・よくある間違い
- “all but” と “almost” の混同
- “all but” は“almost”と非常によく似た意味でも使われますが、「〜を除いてすべて」の意味も持ちます。文脈で意味が変わるので注意。
- “all but” は“almost”と非常によく似た意味でも使われますが、「〜を除いてすべて」の意味も持ちます。文脈で意味が変わるので注意。
- “but all”と語順を逆にしないこと
- “but all” (すべてしかし...) だと意味不明になります。
- “but all” (すべてしかし...) だと意味不明になります。
- 試験での出題
- 難易度のある熟語や読み物問題(LONG READING)で、文脈を捉えて正確に訳せるかを問われることがあります。
- 英検準1級・1級、TOEIC高得点向けの読解などで登場しやすい表現。
- 難易度のある熟語や読み物問題(LONG READING)で、文脈を捉えて正確に訳せるかを問われることがあります。
9. 記憶に残るヒントやイメージ
- “all but”は“almost + except for”の両方を含む万能選手、と覚えると役立ちます。
- 音の響きで覚えるコツ: “All but gone” (もうほぼ消えた) のフレーズでリズミカルに反復すると記憶に残りやすいです。
- “A(すべて) but (しかし)” → “ほとんど”または“〜を除いてすべて”とイメージする。
以上が「all but」の詳細解説です。文脈次第で「ほとんど〜」にも「〜を除いてすべて」にもなるため、慣れるまで具体的な例文に触れて身につけるのがコツです。ぜひ活用してみてください。
...のほかは全員, ...のほかは全部
ほとんど, おおむね
...も同然で