元となった辞書の項目
queer
IPA(発音記号)
解説
以下では、形容詞の “queer” について、学習者向けにできるだけ詳しく解説します。
1. 基本情報と概要
意味(英語・日本語)
- 英語: “queer”
- 日本語: 「奇妙な」「風変わりな」「(性的指向や性自認が)クィアな」
“queer” は、もともと「奇妙な、変わった」という意味で使われてきた形容詞です。一方で、性的指向や性自認が「異性愛・シスジェンダーの枠にとらわれない」という意味合いで使われる場合もあります。後者の場合、LGBTQ+ として広く使われる言葉のひとつで、「自分のジェンダーやセクシュアリティが一般的な分類に当てはまらない人」を指したり、そのような概念やコミュニティを指したりします。ただし、もともとは差別的な文脈でも使われていた語であり、現在は「積極的に差別を乗り越えようとする自己定義の言葉」として使われる場合があります。使う場面や相手をよく考える必要がある単語です。
品詞
- 形容詞 (adjective)
活用形
形容詞のため、原形 “queer” からの比較級や最上級は、以下のように作られる場合もありますが、日常で比較級・最上級を耳にすることはあまり多くありません。
- 比較級: queerer
- 最上級: queerest
他の品詞例
- 名詞として “queer” が「クィアの人々」や「クィア」という概念自体を指す場合あり。
- 動詞としてはあまり一般的ではありませんが、スラングや学術文脈では “to queer something” (何かをクィア的な視点で分析する) という非常に特殊な使われ方があります。
難易度(CEFR レベル)
- B2(中上級)以上
・「奇妙な」という意味にとどまらず、ジェンダー論・社会学に関連する文脈でも登場するため、社会的背景・文脈を理解する必要があります。
2. 語構成と詳細な意味
語構成
- “queer” は明確な接頭語・接尾語を含まない短い単語ですが、古くはドイツ語の “quer” (斜めの、横切った) が起源とされます。
意味の広がり
- 「奇妙な」「変な」
- 風変わりなものを表すとき
- 「(性的・社会的文脈で) クィアな」
- 性的指向や性自認が異性愛や二元的な性に限定されない人や文化的領域を指すとき
よく使われるコロケーション(10個)
- queer community(クィア・コミュニティ)
- queer identity(クィア・アイデンティティ)
- queer culture(クィア・カルチャー/文化)
- queer theory(クィア理論)
- queer space(クィアな空間)
- queer politics(クィア・ポリティクス / 政治)
- queer eye(クィアな視点)
- queer cinema(クィア映画)
- queer expression(クィア表現)
- queer rights(クィアの権利 / LGBTQ+の権利)
3. 語源とニュアンス
語源
- 古英語やドイツ語の “quer”(斜めの)の系統からきており、16世紀ごろから「奇妙な」「普通でない」の意味で使われ始めました。
ニュアンスの変遷
- 20世紀前半までは「おかしな」「変わり者」といったニュアンスの形容詞や名詞として、時に侮蔑的に用いられていました。
- 20世紀後半以降、LGBTQ+ コミュニティのなかで “queer” をポジティブに再定義・再所有する運動が起こり、学問的文脈 (queer theory) や自己定義においても使われるようになりました。
使用時の注意
- 以前は差別的な言葉として使われることが多かったため、配慮が必要です。現在はコミュニティ自身が肯定的に使用する場合がある一方、第三者が安易に使うのはリスクがあります。文脈や親密度に注意して使い分けましょう。
- カジュアルな会話でも使われますが、特に性的指向・性自認の話題ではセンシティブになりやすい語です。公的・フォーマルな場面では “LGBTQ+” など別の言葉を用いることもあります。
4. 文法的な特徴と構文
- 形容詞 (adjective) としては、名詞・代名詞を修飾する。
例: a queer feeling(奇妙な感覚), a queer perspective(クィアな視点) - 名詞的に扱われる場合は冠詞などをつけて “a queer” とするときがあり、ただしその場合は使い手や状況を選びます。
- フォーマル/カジュアル:
- 「奇妙な」という意味であればそこまでフォーマルさを問わないが、LGBTQ+ 文脈で用いるときは、踏まえなければならない歴史的・社会的背景があるので、注意が必要です。
イディオム・構文
- “queer the pitch” (イギリスでのやや古風なイディオムで、他人の計画を台無しにする意)。
- “queer theory” (社会学や文化研究などで用いられる学術用語)。
5. 実例と例文
A. 日常会話での例文(3つ)
- “That’s a queer-looking hat you have on.”
- 「それ、ちょっと変わった帽子だね。」
- “I felt queer this morning, so I stayed home.”
- 「今朝は少し気分が変で、家にいたんだ。」
- “He told me he identifies as queer, and it was really eye-opening.”
- 「彼はクィアだと自認していると教えてくれて、とても勉強になったよ。」
B. ビジネスシーンでの例文(3つ)
- “Our company is organizing a workshop on queer inclusivity in the workplace.”
- 「弊社では職場でのクィアを含む包摂性についてのワークショップを企画しています。」
- “We aim to create a queer-friendly environment for all employees.”
- 「私たちはすべての従業員にとってクィアフレンドリーな環境をつくることを目指しています。」
- “Several employees have joined the queer affinity group to share their experiences.”
- 「複数の従業員が、クィア当事者グループに参加して経験を共有しています。」
C. 学術的な文脈での例文(3つ)
- “Queer theory challenges traditional notions of gender and sexuality within cultural studies.”
- 「クィア理論は文化研究における伝統的なジェンダーやセクシュアリティの概念に疑問を投げかけます。」
- “Her research focuses on queer representations in modern literature.”
- 「彼女の研究は現代文学におけるクィアな表象を主題としています。」
- “The conference addresses queer perspectives on political activism.”
- 「その学会では政治的アクティビズムに対するクィアな視点が取り上げられます。」
6. 類義語・反意語と比較
類義語
- “strange”(奇妙な)
- 一般的な「変わった」の意味だが、差別的文脈は含まない。
- 一般的な「変わった」の意味だが、差別的文脈は含まない。
- “odd”(妙な)
- 砕けた感じで「変な」「妙だな」といった表現。
- 砕けた感じで「変な」「妙だな」といった表現。
- “unusual”(普通でない)
- 中立的で、フォーマルにもカジュアルにも使いやすい。
※ “queer” には「LGBTQ+ の文脈での自己定義」という意味も含まれるため、単純に「strange」や「odd」のように言い換えられるわけではありません。
反意語
- “normal”(普通の)
- 「奇妙・変わっている」の反対として「普通の」を表す語。ただし、クィアの文脈で “normal” を使うときには注意が必要。「何を普通とするか」という価値観に基づくためです。
7. 発音とアクセントの特徴
発音記号(IPA)
- アメリカ英語: /kwɪr/(クウィアに近い発音)
- イギリス英語: /kwɪə(r)/(クウィア、クウィア(r)に近い発音)
アクセント
- 単音節であり、語頭の “que” が最も強く発音されるイメージです。
よくある発音の間違い
- “clear”(クリア)などと混同してしまうことがありますが、最初の子音は [k] に [w] が続くので “kw” の音になります。
8. 学習上の注意点・よくある間違い
- スペルミス
- “quer” と書いてしまうなど。
- “quer” と書いてしまうなど。
- 同音異義語
- 該当するほどの同音異義語はあまりありませんが、音が似ている語(例: “career”, “clear”)と混同する可能性があります。
- 該当するほどの同音異義語はあまりありませんが、音が似ている語(例: “career”, “clear”)と混同する可能性があります。
- 社会的・歴史的な背景の理解不足
- 差別語としての使われ方や、再定義・再所有してきた歴史などを理解して使う必要があります。
試験対策
- TOEIC などで直接出題される頻度は低めですが、現代英語の語彙として、また社会的・文化的背景を問う試験では登場することがあります。
- 英検などの試験でも、文脈理解の問題でたまに登場。LGBTQ+ など社会問題を取り上げる長文に出る場合があるため、背景を理解しておくと読解に役立ちます。
9. 記憶に残るヒントやイメージ
- 「奇妙な」と「クィア」という二面性を持つ単語。
- ドイツ語の “quer” (斜め) が語源→「真っ直ぐではない、斜めから見た」というイメージを思い出すと、「普通のやり方やまっすぐな道筋とは違う」というニュアンスを覚えやすい。
- LGBTQ+ 文脈ではよく目にする単語なので、関連ニュースやドキュメンタリー、映画のタイトル(例: “Queer Eye”)などとあわせて覚えると定着しやすいでしょう。
以上が形容詞 “queer” の詳細な解説です。「奇妙な」という基本的な意味とともに、LGBTQ+ など社会的・文化的文脈での重要なキーワードとなっている点に留意して、場面に応じた使い方を身につけてください。
意味のイメージ
意味(1)
風変りな,変な
意味(2)
気分が悪い,目まいがする