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vice
解説
以下では「vice」という語について、特に「形容詞(副・代理の)」としての側面に焦点を当てて解説します。もっとも一般的には「vice」は接頭語(副~、次位の~)として使われますが、名詞として「悪徳」という意味を持つことも有名です。ここでは、形容詞的な役割を中心に、できるだけ詳しく説明していきます。
1. 基本情報と概要
意味(英語 / 日本語)
- 英語: “vice” (adjective) – “deputy,” “acting in place of,” “secondary in rank”
- 日本語: 「代理の」「副の」「次位の」という意味です。通常は「vice-president(副大統領)」「vice-principal(副校長)」のように、役職名の前につけて「代理・副」の役割を示します。日常会話では単独の形容詞として用いるより、職名などの前に接頭語的に置かれることが多い単語です。
「誰かの代理を務める」とか「正式な役職者の次に位する」というニュアンスで使われます。
品詞
- 形容詞 (adjective)
ただし、厳密には「vice」を単独の形容詞として使う場面は非常に少なく、ほとんどは「副・代理」という意味の接頭語として名詞と結びついて使われることが多いです。 - 名詞 (noun)
「悪徳」「悪行」「悪い習慣」などの意味を持つ名詞としても有名。 - 副詞や動詞としての形はありません。
活用形
形容詞「vice」は、原形のみで比較変化(比較級・最上級)はありません。
他の品詞例
- 名詞の「vice」: 「悪徳」「悪い習慣」を指します。(例: “He was corrupted by vice.”)
- 接頭語「vice-」: 役職名や地位の前につけて「副の」「代理の」という意を表します。(例: “vice-president,” “vice-principal,” “vice-admiral”)
CEFRレベルの目安
- B2(中上級)〜C1(上級)レベル
一般的な日常会話の範囲を超えて、職務上の表現や公的な用語としても理解する必要があるため、中上級以上で学ぶ単語といえます。
2. 語構成と詳細な意味
語構成
- 語幹: “vice”
ラテン語の “vicis”(「代わり」「交替」)に由来。英語では「代理の」「副の」という意味を表す接頭語として主に使われます。
他の単語との関連性・派生語など
- “vice-president”:「副大統領」「副社長」など
- “vice-principal”:「副校長」
- “vice-chairman”:「副議長」
- “vice-admiral”:「海軍中将」
- “vice versa”:「逆もまた同様に」
※こちらはラテン語由来の成句で、副詞句扱いです。
よく使われるコロケーション・関連フレーズ(10個)
- vice president → 副大統領・副社長
- vice principal → 副校長
- vice chairman → 副議長
- vice admiral → 海軍中将
- vice captain → 副キャプテン(チームの副リーダー)
- vice consul → 副領事
- vice squad → (警察の)風紀犯罪取締り部隊(「悪徳犯罪課」)
- vice-like grip → バイス(万力)のように非常に強い握力
- vice-chancellor → (大学などの)副総長
- vice premier → 副首相
3. 語源とニュアンス
語源
- ラテン語 “vicis”(「交替」「代わり」)が元になり、フランス語などを経由して英語に入ってきました。もともとは「~の代わり」「代理」という意味合いを持ちます。
ニュアンス・使用時の注意点
- 「副~」「代理~」として、フォーマルな場面や公的な地位・肩書きを示す際に用いられます。
- カジュアルな会話で「vice」を単独の形容詞として使うことはほとんどありません。会話では「He is the vice president.」のように役職名とセットで使うのが普通です。
4. 文法的な特徴と構文
一般的な構文
- 基本的に “vice + [職名]” の形で、名詞句を作ります。例: “He became vice chairman.”
- 形容詞「vice」が後続の名詞を修飾する形です。
- 「副」や「代理」という役割を示すため、フォーマルな文脈で使われます。
可算/不可算・他動詞/自動詞など
- 形容詞には可算・不可算の区別がないため、特別な文法ルールはありません。
- 動詞としての用例はありません。
5. 実例と例文
ここでは、「vice」を含む形での例文を示します(多くは職名との結びつきとして使われます)。それぞれ日常会話、ビジネス、学術的と分けて紹介します。
日常会話 (Casual)
- “Our team just chose a new vice captain to help the coach.”
(うちのチームは新しい副キャプテンを選んで、コーチをサポートすることになったよ。) - “Next year, I’ll run for vice president of the student council.”
(来年、生徒会の副会長に立候補するつもりなんだ。) - “The vice principal came into our classroom today.”
(今日は副校長先生がうちのクラスにいらっしゃったよ。)
ビジネス (Formal/Business)
- “He was appointed vice president of the company last month.”
(彼は先月、その会社の副社長に任命されました。) - “I had a meeting with the vice chairman regarding the new project.”
(新プロジェクトに関して、副議長と打ち合わせをしました。) - “The vice CEO will oversee the international expansion plan.”
(副最高経営責任者が国際的な拡大計画を監督する予定です。)
学術的・公的場面 (Academic/Governmental)
- “The university’s vice-chancellor addressed the graduating class.”
(その大学の副総長が卒業生に対して講演を行いました。) - “A vice consul typically handles consular affairs in the absence of the consul general.”
(副領事は総領事が不在の際、領事業務全般を扱うことが多い。) - “He was promoted to vice admiral after thirty years of service.”
(30年の勤務を経て、彼は海軍中将へと昇進した。)
6. 類義語・反意語と比較
類義語
- deputy (代理の)
“vice”よりも広く「代理・補佐」の意味で、肩書き以外の場面でも使いやすい。 - assistant (補佐の)
「副」よりも「助手」というニュアンスが強い。 - acting (代行の)
一時的に職務を代わりに務める意味合いが強い。 - subordinate (下位の)
「下位にある」ことを指すが、肩書きや役職名には一般的に使わない。
反意語
- chief (最高位の, 長)
- principal (主要な, 主任の)
- head (トップの)
7. 発音とアクセントの特徴
発音記号(IPA)
- イギリス英語 (BrE): /vaɪs/
- アメリカ英語 (AmE): /vaɪs/
アクセント
- 1音節の単語なので、特定の強勢位置はなく全体を一息で発音します。
よくある間違い
- “vice” (悪徳 / 副) と “vise” (米国式で「万力」という工具を指す場合の綴り) はスペリングが異なるので注意が必要です。ただしアメリカ英語ではどちらも /vaɪs/ で発音されます。
8. 学習上の注意点・よくある間違い
- 日常英会話では、単独の形容詞として “vice” を使うことは非常にまれです。ほぼ専門的・公的役職の名詞の前に置く形で使われます。
- “vice” には名詞として「悪徳/悪行」の意味もあるため、文脈をよく読み取る必要があります。
- “vice” と “vice-” を混同しないようにしましょう。通常は「vice-◯◯」の形で肩書き表現になります。
- TOEICや英検などでは、職位を表す言葉として「vice president」等が出題されることがあります。
- スペルミス:「vice」ではなく “vise” と書いてしまう間違いが時々見られますので注意してください。
9. 記憶に残るヒントやイメージ
- 「vice」と聞くと「悪徳」という意味を先に思い浮かべる人も多いですが、「副・代理」の接頭語としての使い方も重要です。
- 「vice-◯◯」は「次の席にいる人」というイメージを持つと覚えやすいでしょう。「メイン(主役)のすぐ下(次位)」という感覚でとらえてみてください。
- 「vice versa(ヴァイス・ヴァーサ)」も「逆もまた同様」という有名フレーズなので合わせて覚えると印象に残りやすいです。
以上が、形容詞(接頭語的に「副・代理」の意味)としての「vice」の詳細解説です。ほとんどは職名の前に置いて使われ、フォーマルな場面や公的な肩書きに関連して登場する単語ですので、日常的に目にするときは「副◯◯」「代理◯◯」という役職であることを意識して覚えておくことをおすすめします。
意味のイメージ