元となった辞書の項目
tip
IPA(発音記号)
動詞
…を傾ける / …をひっくり返す《over, up》 / (あいさつのために)〈帽子〉を持ち上げる,にさわる / 《英》(容器から…に)…をあける(empty)《... out of ... into ...》 / 傾く / ひっくり返る《over》
解説
1. 基本情報と概要
単語: tip
品詞: 動詞 (ほかに名詞としても使用可)
意味(英語・日本語)
- 英語: to give a gratuity to someone, to tilt or cause to tilt, to topple or cause to topple, to provide secret or confidential information.
- 日本語: (1)チップを渡す、(2)傾ける/傾く、(3)倒す/倒れる、(4)内密に知らせる。
「チップを渡す」という意味では、レストランやタクシーでサービスしてくれた人にお礼(お金)をあげることを指します。「傾ける/倒す」というイメージでは、コップなどを軽く動かして倒してしまうニュアンスです。「内密に知らせる」は「tip off」の形で、警察に情報提供などをする場合に使われることがあります。
活用形
- 現在形: tip
- 過去形: tipped
- 過去分詞形: tipped
- 現在分詞形/動名詞: tipping
他の品詞の例
- 名詞: “tip”(先端、チップ〈お礼のお金〉など)
難易度(CEFR レベル目安)
- B1(中級): 「tip」という動詞は、サービスを受けたときにお礼のお金を渡す意味や、何かを軽く倒す/傾ける基本的な英単語なので、中級レベルで学習者が理解しやすい単語です。
2. 語構成と詳細な意味
語構成
「tip」は非常に短い単語で、明確な接頭語や接尾語が含まれているわけではありません。ただし、句動詞として「tip off」「tip over」などで使われる場合は、それぞれ意味が変化します(句動詞の一種)。
関連語・派生語
- tipoff (名詞): 内通、情報提供
- tipper (名詞): チップを渡す人(やや限られた用例)
よく使われるコロケーション(共起表現)10選
- tip off – (内報する、密告する)
- tip over – (ひっくり返す / 倒れる)
- tip the scales – (天秤を傾ける、形勢を変える)
- tip the balance – (決定的な要因になる)
- tip one’s hat (to …) – (敬意を表して帽子を軽くとる)
- tip a waiter – (ウェイターにチップを渡す)
- tip the odds in one’s favor – (有利な状況にする)
- tip someone for … – (…に対して人にチップを渡す)
- tip forward/backward – (前/後ろに傾ける)
- tip the contents out – (中身を傾けて出す)
3. 語源とニュアンス
語源
- 「tip」は中英語(Middle English)で “tippen” のように記録されており、当初は「軽く触れる」「軽く叩く」というイメージだったとされます。そこから “先端” の意味や“軽い動きを加える”意味が派生し、さらに金銭的な「チップ」の意味合いへと広がりました。
ニュアンス・使用時の注意
- 「チップを渡す」: 北米などチップ文化のある国で使われます。カジュアルな口語表現からフォーマルな状況まで幅広く使われるため、レストランやタクシーなどのシーンで自然に登場します。
- 「傾ける/倒す」: 物理的に軽く倒す、ゆっくりと傾けるイメージがあります。ややカジュアルな口語表現です。
- 「tip off」: 「内通する」「事前に警告する」という少しフォーマル/ビジネス/犯罪関連ニュース等で見られる表現です。
4. 文法的な特徴と構文
- 他動詞としての用法: “He tipped the waiter five dollars.”(ウェイターに5ドルのチップを渡した)
- 自動詞としての用法: “The glass tipped over.”(グラスが傾いて倒れた)
- 句動詞: “tip off” (誰かに密告する)、 “tip over” (倒す/倒れる) など
イディオム例
- tip (someone) off: 「(誰かに)情報を洩らす、警鐘を鳴らす」
- tip one’s hand: 「意図を明かす、手の内をさらす」(主に米口語)
フォーマル/カジュアル
- チップを渡す意味での日常使用はカジュアル/フォーマル両方で使われます。
- 「tip off」は主にビジネスシーンや公式な文脈でも見られるため、必ずしもカジュアルには限定されません。
5. 実例と例文
日常会話
- “Don’t forget to tip the delivery guy.”
(配達員にチップを渡すのを忘れないでね。) - “I accidentally tipped my coffee over this morning.”
(今朝コーヒーをうっかりこぼしちゃったんだ。) - “Could you tip the waitress? I don’t have small bills.”
(小銭がないからウェイトレスにチップ渡してくれる?)
ビジネス
- “He tipped me off about the stock’s decline in advance.”
(彼は株価が下がることを事前に教えてくれた。) - “The exclusive report was based on an anonymous tip.”
(その特ダネ記事は匿名の情報提供に基づいていた。) - “We need to tip the balance in our favor for this negotiation.”
(この交渉を有利にするために決定打を打たねばならない。)
学術的・公的な文脈
- “Researchers are trying to tip the scales of public opinion with hard data.”
(研究者たちは確かなデータによって世論の流れを変えようとしている。) - “The attorney prepared evidence that might tip the court’s decision.”
(弁護士は裁判の決定を傾けるかもしれない証拠を用意した。) - “A whistleblower tipped off the authorities about corruption in the agency.”
(内部告発者がその機関での汚職について当局に密告した。)
6. 類義語・反意語と比較
類義語
- tilt (傾ける)
- “tilt”は「角度をつける」「傾ける」という意味で、主に物理的な傾斜に焦点をあてます。“tip”も似たニュアンスがありますが、“tip”は軽く動かすイメージが強い場合があります。
- “tilt”は「角度をつける」「傾ける」という意味で、主に物理的な傾斜に焦点をあてます。“tip”も似たニュアンスがありますが、“tip”は軽く動かすイメージが強い場合があります。
- lean (もたれる, 傾く)
- “lean”は人がよりかかる、物が斜めに立つニュアンスです。“tip”は一瞬で倒してしまう(倒れてしまう)ことも含むため、少し動きが急なイメージ。
- “lean”は人がよりかかる、物が斜めに立つニュアンスです。“tip”は一瞬で倒してしまう(倒れてしまう)ことも含むため、少し動きが急なイメージ。
- give (someone) a gratuity (チップをあげる)
- こちらはよりフォーマルで具体的に「お礼のお金を渡す」行為です。“tip”のカジュアル表現に対してフォーマルな言い回しです。
反意語
- startle / upright 等が厳密な反意語ではありませんが、文脈によって「倒す/傾ける」動作の逆は「まっすぐ立てる」「立て直す」などを表現することがあります。
7. 発音とアクセントの特徴
- 発音記号(IPA): /tɪp/
- 音節: 1音節 (tip)
- アクセント: 単音節のため特にアクセントの移動はありません。
- アメリカ英語とイギリス英語: 大きな違いはありません。どちらも [tɪp] と短い「イ」の音になります。
- よくある間違い: 「type (/taɪp/)」と混同してしまう学習者がいますが、母音が違いますので注意してください。
8. 学習上の注意点・よくある間違い
- スペルミス: “tipp” や “tiped” などと書いてしまうミス。過去形は “tipped” (p を重ねる)。
- 同音異義語との混同: “tip” (先端、チップ) と “tip” (動詞として傾ける/チップを渡す) は同じ綴りですが品詞が異なるので文脈で判断が必要です。
- 試験対策: TOEICや英検などで「tip off」などの句動詞表現が出ることがあります。特にニュース・報道関連の文章で「tip」が見られる場合は「情報提供」「密告」の文脈かもしれないと考えると対策しやすいです。
9. 記憶に残るヒントやイメージ
- 「チップを渡す」場面をイメージすると覚えやすいです。サービスを受けて「軽く(tip)」お金を手渡す気持ちを想像するのもよいでしょう。
- 「軽く傾ける」動作を想起させるため、コップをちょっと倒すイメージをすると “tip (over)” が覚えやすいです。
- “tip” という短い単語ゆえに“tipped, tipping”のように「p」を重ねる書き方が要注意ポイントです。
- 覚え方: 「チップ(tip)」と日本語でも言うので、”tip = 軽く渡す”・”傾ける”というイメージをセットで関連付けるとスムーズに覚えられます。
以上が動詞「tip」の詳しい解説です。何かを軽く傾けたり、誰かに感謝の気持ちを表したりと、いろいろな使い方ができる単語なので、ぜひ上手に使いこなしてみてください。
意味のイメージ
意味(1)
…‘を'傾ける
意味(2)
《英》(容器から…に)…‘を'あける(empty)《+名+out of+名+into+名》
意味(3)
傾く
意味(4)
…‘を'ひっくり返す《+over(up)+名,+名+over(up)》
意味(5)
(あいさつのために)〈帽子〉‘を'持ち上げる,‘に'さわる
意味(6)
ひっくり返る《+over》
意味(7)
傾けること;傾斜
意味(8)
《英》ごみ捨て場