very
以下では、形容詞としての very
を中心に、できるだけ詳しく解説します。普段よく耳にする「とても」「非常に」という意味は副詞としての使い方ですが、ここでは「まさに」「ちょうどその」「まったくの」というニュアンスをもつ形容詞 very
に焦点を当てます。
1. 基本情報と概要
・英単語
- very
・品詞
- 形容詞 (主な意味: 「まさに」「ちょうどその」「まったくの」)
- ※同じスペルの副詞 (主な意味: 「とても」「非常に」) としても非常によく使われます。
・基本的な意味 (形容詞)
- 「まさに」「ちょうどその」「まったくの」「まさしく…な」
例: “the very book I was looking for” (私が探していたまさにその本)
この形容詞用法は、「まさにこの瞬間」「まったく同じ物事」といった場面で使われます。ニュアンスとしては「特定のものをはっきり強調して指し示す」イメージで、少しフォーマルないしやや文語的な響きを持ちます。
・活用形
英語の形容詞の多くは比較級・最上級を持ちますが、very
の形容詞としての比較形・最上級は通常使われません。古風な用法として “verier,” “veriest” という形もありますが、現代英語ではほとんど見かけません。
・他の品詞になった場合
- 副詞: “very” (とても/非常に)
例: “He is very kind.” (彼はとても親切です)
・CEFRレベルの目安
- 副詞としての
very
: A1 (超初心者レベル) - 形容詞としての
very
: B1 (中級)
- 日常会話でもまれに聞きますが、文字や文で特定の対象を強調するときに使われがちなため、少しレベルが上がります。
2. 語構成と詳細な意味
・語構成
very
は接頭語や接尾語を持つわけではありません。もともとフランス語由来の “verrai(真実の、本当の)” が変化して現在の “very” になったとされます。
・派生語や類縁語
- “verily” (古風・文語的:「まことに」「疑いなく」)
- “verisimilitude” (名詞・C1レベル: 「真実味」「本当らしさ」) など、
veri-
の部分に「真実」というニュアンスが含まれる単語が存在します。
・よく使われるコロケーション(形容詞として)
以下は “very” を形容詞として使う代表的な表現です。横に(日本語訳)を付けています。
- the very beginning (まさに始まり)
- the very end (まさに終わり)
- the very idea (まさにその考え)
- the very core (まさに核心)
- the very essence (まさに本質)
- the very moment (まさにその瞬間)
- the very same ~ (まったく同じ~)
- the very day (まさにその日)
- the very place (まさにその場所)
- the very thought (まさにその考え)
これらの表現は「特定の対象を強調する」役割を担います。
3. 語源とニュアンス
・語源
- 中英語で “verray” や “verrai” として使われ、古フランス語の “verai(本当の)” に由来。さらにラテン語の “verus(真実の)” が起源とされます。
・歴史的な使われ方
- かつては副詞的な意味「非常に」とともに、形容詞として「真実の」「本物の」というニュアンスでも使われていました。現在でも「まさに」「ちょうどその」という意味で形容詞として残っています。
・ニュアンスや感情的な響き
- 「話し手が特定のものを強く際立たせたい」気持ちが含まれます。
- カジュアル会話の場合、あまり形容詞
very
は多用されませんが、文書やスピーチでは「強調のための印象的な表現」として使われることがあります。
4. 文法的な特徴と構文
・一般的な構文
the very + [名詞]
例: “the very man I was talking about” (私が話していたまさにその男性)the very + [形容詞] + [名詞] や、the very + [名詞] + that [節] の形で使われることもあります。
例: “This is the very book that changed my life.” (これは私の人生を変えたまさにその本です)
・文法上のポイント
- 形容詞として使うときは、通例 “the very + 名詞” の形を取ります。定冠詞 “the” が伴うケースがほとんどです。
- 名詞としても動詞としても使いませんので、そこは混同しないように注意が必要です。
・フォーマル/カジュアル
- 形容詞
very
はやや文語的、もしくはフォーマルな響きを含む場合が多いです。 - カジュアルな会話では「まさにこの」「ちょうどその」を言いたいときは “exact” や “exactly” に置き換えることも多いです。
5. 実例と例文
ここでは、さまざまな文脈での例文を提示します。形容詞としての very
にフォーカスしますが、参考として副詞 very
も混ぜています。
(1) 日常会話での例 (形容詞として)
- “This is the very shirt I wanted to buy!”
(これこそが私が買いたかったまさにそのシャツだよ!) - “You are standing on the very spot where they filmed the movie.”
(あなたはその映画を撮影したまさにその場所に立っているんだよ。) - “She found the very dog she lost months ago.”
(彼女は数か月前に失くしたまさにその犬を見つけた。)
(2) ビジネスシーンの例 (形容詞として)
- “This is the very proposal that secured our biggest contract.”
(これが私たちの最大契約を勝ち取ったまさにその提案書です。) - “The very idea of merging with our competitor sounded risky.”
(競合他社との合併というまさにその考え自体がリスクに感じられました。) - “On this very occasion, we should clarify the company’s vision.”
(まさにこの機会に、会社のビジョンを明確にすべきです。)
(3) 学術的な文脈での例 (形容詞として)
- “He focused on the very concept of ‘identity’ in his thesis.”
(彼は論文の中で「アイデンティティ」というまさにその概念に焦点を当てた。) - “The very basis of quantum theory was questioned by new findings.”
(量子論のまさに根拠そのものが、新しい発見によって問い直された。) - “The paper examines the very foundation of modern ethics.”
(その論文は現代倫理学のまさに基礎そのものを検証している。)
(参考) 副詞 very
を使った日常会話3例
- “I’m very tired today.” (今日はとても疲れているよ。)
- “It’s very cold outside.” (外はとても寒いよ。)
- “He’s very interested in photography.” (彼は写真にとても興味がある。)
6. 類義語・反意語と比較
・類義語 (形容詞としての “very” に近い意味)
- “exact” (正確な/まさにその)
- “the exact place” = “the very place” とほぼ同義。
- ただし “exact” の方がやや直接的な「正確度」というニュアンスに寄る。
- “the exact place” = “the very place” とほぼ同義。
- “identical” (同一の/まさしく同じ)
- “the identical item” = “the very same item”
- こちらは「全く同じである」ことを強調。
- “the identical item” = “the very same item”
- “precise” (正確な/細部まで同じ)
- “the precise moment” と表現することができ、
very moment
と同様にポイントを強調する。
- “the precise moment” と表現することができ、
・反意語
- 形容詞としての “very(まさにその)” に対する明確な反意語はありませんが、強調を和らげる・否定する表現としては “not the same,” “different,” “unrelated” などが挙げられます。
7. 発音とアクセントの特徴
・発音記号(IPA)
- アメリカ英語: /ˈvɛri/
- イギリス英語: /ˈveəri/
・強勢(アクセント)の位置
ve
の部分にアクセントが置かれます。
“VE-ry” と区切るイメージ。
・アメリカ英語とイギリス英語での違い
- アメリカ英語: /vɛ-/ のように「ヴェリ」に近い発音。
- イギリス英語: /veə-/ のように「ヴェアリ」に近く、やや「エア」のような音が混ざります。
・よくある発音ミス
- 「ベリー」や「ヴァリー」とならないように注意。
- しっかりと /v/ の摩擦音で始めること。
8. 学習上の注意点・よくある間違い
- 副詞 “very” と形容詞 “very” の混同
- 大多数の場合、副詞として使われるため、形容詞的用法は意識しないと見落としがちです。
- 大多数の場合、副詞として使われるため、形容詞的用法は意識しないと見落としがちです。
- “the very + 名詞” が一般的
- 前に定冠詞 “the” が必要なケースが圧倒的に多いので、冠詞を忘れないようにしましょう。
- 前に定冠詞 “the” が必要なケースが圧倒的に多いので、冠詞を忘れないようにしましょう。
- スペルミス
- “vary” (変化する) や “every” (すべての) と混同しないように注意。
- “vary” (変化する) や “every” (すべての) と混同しないように注意。
- 試験対策
- TOEIC などでは副詞としての “very” は頻出ですが、文中で「the very + 名詞」として強調を表す表現が出れば、形容詞用法を見抜けると得点につながる場合があります。
9. 記憶に残るヒントやイメージ
- 「very」はもともと「真実の」「本当の」という単語から派生している、と覚えておくと「まさに」「本当の意味での」というニュアンスを感じ取りやすくなります。
- 覚えるときは “the very + 名詞” というひとかたまりでイメージを持つと、形容詞としての使い方を頭に入れやすいです。
- スペリングは “v-e-r-y” の4文字だけなので、逆に形が似ている “vary” “every” に要注意、とのセットで意識すると記憶に残りやすいでしょう。
以上が、形容詞としての very
についての詳説です。普段のコミュニケーションでは副詞的用法が圧倒的に多いですが、文章やスピーチなどで「この強調は特別!」というときに “the very + 名詞” を使うと、一段と印象深い表現になります。ぜひ活用してみてください。