元となった辞書の項目
but
IPA(発音記号)
解説
1. 基本情報と概要
単語: but
品詞: 主に接続詞 (conjunction) で使用されますが、まれに前置詞 (preposition) や副詞 (adverb) としても使われます。本解説では「前置詞としての but」に焦点を当てます。
- 英語での意味: “except (for)”, “apart from” (…を除いて、…以外は)
- 日本語での意味: 「~を除いて」「~以外に」
「but」は日常では「しかし」という接続詞が最も有名ですが、前置詞としては「~を除いて」という意味合いを持ち、やや文語的・フォーマルなニュアンスで用いられます。
CEFRレベルの目安
- 前置詞としての用法は、学校英文法で習うことはあってもあまり一般的ではありません。したがって、前置詞的用法の理解としては B2(中上級) 以上を目安とするとよいでしょう。
活用
「but」は変化しない単語です。ほかの英単語と違い、時制や数による変化はありません。
他の品詞での例
- 接続詞 (conjunction): He tried to help, but she refused. (しかし)
- 副詞 (adverb): He is but a child. (彼は子供にすぎない)
2. 語構成と詳細な意味
「but」の語構成は非常に短く、接頭語・接尾語といった形に分けられません。「but」の前置詞としての主な意味は「~を除き、ほかには」。文語的な表現ややや古風な表現で使われることが多いです。
よく使われるコロケーション・関連フレーズ(10選)
- anything but : ~以外は何でも
- no one but : ~の他は誰も
- nothing but : ~以外は何も(= only)
- all but : ~を除いてすべて
- everyone but me : 私以外のみんな
- but for : ~がなければ/~を除いて
- none but : ~以外には誰も(何も)~ない
- nobody but : ~以外に誰も~ない
- with no one but : ~以外誰もいない状態で
- there is no room but : ~以外には余地がない
これらは前置詞的な意味合い(「~を除き」「~以外」)が反映されやすい表現です。
3. 語源とニュアンス
語源
- 「but」は古英語の “be-ūt” から変化したとされ、元は「外にある」や「外側へ」などの意味を含んでいました。そこから「除外する、~以外」という用法につながったといわれています。
ニュアンス・使用上の注意点
- 文語的/フォーマル
前置詞としての「but」はカジュアルというより文語的・フォーマルな雰囲気を帯びます。 - 限定・除外のニュアンス
「~以外すべて」といった強調的な使い方になることがあります。ときには「~しかない」という極端な意味になることもあります(nothing but = only)。
4. 文法的な特徴と構文
- 前置詞+代名詞
前置詞として使うときは directly 後ろに名詞や代名詞が来ます。例:
- Everyone came but me. (みんな来た、私を除いて)
- Everyone came but me. (みんな来た、私を除いて)
- ちょっと古風な響き
except (for)
に置き換え可能ですが、but のほうが文語的です。
- 可算・不可算: 前置詞なので、名詞を修飾する際の可算・不可算の区別は特にありません。
- フォーマル/カジュアル: 前置詞としての「but」は一般的なカジュアル会話ではあまり見かけず、書面ややや格調高い文脈、詩的な表現などで目にすることが多いです。
5. 実例と例文
ここでは、前置詞用法を意識した例文を紹介します。
日常会話での例 (カジュアルなシーン)
ただし、カジュアルではあまり多用されません。あえて短いセリフで示します。
- “We have nothing but bread at home.”
- (家にはパンしかないよ。)
- (家にはパンしかないよ。)
- “Everyone but you has already left.”
- (あなた以外、みんなもう出発しちゃったよ。)
- (あなた以外、みんなもう出発しちゃったよ。)
- “I need no one but you right now.”
- (今はあなた以外は誰もいらない。)
ビジネスシーンでの例 (ややフォーマルな表現)
- “No candidates but Ms. Jones have satisfied all the requirements.”
- (ジョーンズさん以外にすべての要件を満たした候補者はいません。)
- (ジョーンズさん以外にすべての要件を満たした候補者はいません。)
- “Everyone but the project leader should submit weekly reports by Friday.”
- (プロジェクトリーダー以外は金曜日までに週次レポートを提出してください。)
- (プロジェクトリーダー以外は金曜日までに週次レポートを提出してください。)
- “We have received all but one of the documents requested.”
- (要求されていた書類は一つを除いてすべて受け取りました。)
学術的な文脈での例
- “All experimental groups but the control group showed significant improvement.”
- (対照群を除くすべての実験群で有意な改善が見られました。)
- (対照群を除くすべての実験群で有意な改善が見られました。)
- “There is no solution but to revise our hypothesis.”
- (仮説を修正する以外に解決策はありません。)
- (仮説を修正する以外に解決策はありません。)
- “Nothing but rigorous testing will suffice for this study.”
- (この研究では、厳密なテスト以外は十分ではありません。)
6. 類義語・反意語と比較
類義語
- except (…を除いて)
- 日常的かつ一般的。口語でも使いやすい。
- 例: “Everyone came except me.” → ほぼ同じ意味。
- 日常的かつ一般的。口語でも使いやすい。
- excluding (…を除外して)
- フォーマルな文書やアカデミックなステートメントに多い。
- 例: “Excluding the sales tax, the item costs $10.”
- フォーマルな文書やアカデミックなステートメントに多い。
- aside from (…を除いて、…とは別に)
- カジュアルからビジネスまで幅広く使える。微妙に「別として」というニュアンスも含む。
- カジュアルからビジネスまで幅広く使える。微妙に「別として」というニュアンスも含む。
- other than (…以外に)
- 「~以外はない/~以外の」のニュアンス。本質は「but」と似ている。
- 「~以外はない/~以外の」のニュアンス。本質は「but」と似ている。
反意語
- 厳密な反意語はないですが、「含む」というニュアンスを出したい場合は
including
(…を含めて) が対極的な表現にあたります。
7. 発音とアクセントの特徴
- 発音記号 (IPA): /bʌt/
- アメリカ英語・イギリス英語: ともに /bʌt/ と発音され、大きな違いはありません。
- よくある間違い: 「butt (おしり)」/bʌt/ とつづりを混同したり、but を強調するあまり [buːt] と伸ばしたりしないように気をつけましょう。1音節で短く「バット」と発音します。
8. 学習上の注意点・よくある間違い
- スペルの混同: 「but」と「butt(おしり)」のつづりを間違えないようにしましょう。
- 前置詞と接続詞の混同:
- 接続詞としての「しかし」と、前置詞の「~以外」という意味を混同しがちです。文脈をしっかり見極めましょう。
- 接続詞としての「しかし」と、前置詞の「~以外」という意味を混同しがちです。文脈をしっかり見極めましょう。
- 試験対策:
- TOEICや英検などでも、語法問題で
Everyone but me
のような形が選択肢に見られることがあります。接続詞だけでなく、前置詞としての使い方も理解しておくと得点アップにつながります。
- TOEICや英検などでも、語法問題で
9. 記憶に残るヒントやイメージ
- 「but」は「バット」と「切り離す」イメージで覚えると、除外のニュアンス(~を切り離す、外側に置く)が想起しやすいです。
- また、前置詞としての「but」は日常ではあまり頻繁に出てきませんが、好きな英文学のフレーズや詩の一節などに時々登場します。そうした文脈で見かけたときは「~以外」の意味だとピンとくるようにしておきましょう。
以上が、前置詞としての “but” の詳細な解説です。普段は「しかし」の接続詞と認識している方が多いかもしれませんが、ひとつ上の英語表現として前置詞用法も頭に入れておくと、読書や文語的な文章理解の幅が広がります。