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as such
解説
以下では英語のフレーズ「as such」を、できるだけ詳細に解説します。
1. 基本情報と概要
意味(英語・日本語)
- 英語: “as such”
- 日本語: 「それ自体として」「それにふさわしく」「そのものとして」
「as such」は、「それ自体として」や「そういうものとして」というニュアンスを伝えるときに使われる表現です。
たとえば、「彼は医者ではないので、医者としての責任や権限は持たない」という意味合いを伝えたいときに “He isn’t a doctor, so he has no responsibility as such.” のように用います。
直前の語句や状況を受けて、「それ自体としては~ではない」「それゆえに」といった意味合いを補足する、ややフォーマルな表現です。
品詞と活用
- フレーズ・副詞的表現(他の品詞の活用形はありません)
「as such」は言い回しなので、単独で動詞のように活用することはありません。特定の時制や変化形は存在しない、定型フレーズ(特に副詞的表現)と考えてください。
他の品詞形の例
- 「such」自体は形容詞や代名詞として使われることがあります(例: “such a thing!” / “We’ve never seen such!”)。
- 「as」は接続詞や前置詞、副詞などいろいろな役割を持ちますが、「as such」という特定の連語としては単独で意味を成します。
CEFRレベルの目安
- B2(中上級): 日常会話でも使われることはありますが、主に読解やビジネス、論文など、少しフォーマルな文脈で登場しやすい表現です。
2. 語構成と詳細な意味
接頭語・接尾語・語幹
- 「as such」は、独立した2語の連語です。「as」は「〜のように、〜のときに」といった意味を持つ接続詞・前置詞。「such」は「そのような」という形容詞や代名詞です。
- 一般的な接頭語や接尾語のついた単語ではありません。
他の単語との関連性・派生語
- “as is”: 「(故障や不備など)現状のままで」
- “such as”: 「例えば〜のような」
- “as it were”: 「いわば」「言うなれば」
よく使われるコロケーションや関連フレーズ(10個)
- “He is not an expert as such.”
→ 「彼は専門家というわけではない(そのものとしては専門家ではない)。」 - “No rule was stated as such.”
→ 「規則そのものが明示されていたわけではない。」 - “There is no solution as such.”
→ 「そのものとしての解決策はない。」 - “We can’t treat this as such.”
→ 「これを(それ自体として)そのまま扱うわけにはいかない。」 - “It’s not a job as such.”
→ 「それは仕事と呼べるほどのものではない。」 - “This was not planned as such.”
→ 「これはそういうものとして計画されてはいなかった。」 - “We don’t have a policy as such.”
→ 「それ自体としての方針はありません。」 - “I don’t mind constraints as such.”
→ 「束縛そのものは気にしない。」 - “He is recognized as such.”
→ 「彼はその地位(名目)どおりに認められている。」 - “We use the term ‘category’ as such.”
→ 「私たちは『カテゴリー』という用語を、そのままの意味で使います。」
3. 語源とニュアンス
語源
- 「as」は古英語の
ealswa
(まったく同じように)などが変化し、「such」は古英語の “swylc” (so-like, それに似ているもの) に由来すると考えられています。 - “as such” というフレーズは、英語の中世期から「それ自体として」「それとして」という意を伝える表現として使われてきました。
ニュアンス・使用上の注意
- ややフォーマル・文章的な表現
- 会話でも使われるが、学術論文やビジネスメールなどで頻繁に見られます。
- 「それ自体を本質的にそう捉えると〜ではない」や「実際にはそうではないけれども形の上ではそう見える」といった、微妙なニュアンスを伝える場合に便利です。
4. 文法的な特徴と構文
一般的な構文
- [主語] + [be動詞] + not + [as such].
- 例: “He is not a leader as such.”
- 例: “He is not a leader as such.”
- [there is / are] + no + [名詞] + as such.
- 例: “There is no rule as such.”
- 例: “There is no rule as such.”
- 文章の挿入的に用いる
- 例: “I don’t consider it, as such, a major problem.”
フォーマル / カジュアル
- フォーマル度: やや高め。 γρα面的 (文章的) な印象を与えます。
- カジュアル度: 日常会話でも可能ですが、あまり砕けた表現ではありません。
可算・不可算の区別や他動詞・自動詞等の区別
- “as such” 自体はフレーズのため、名詞の可算・不可算や動詞の他動詞・自動詞の区別は特にありません。
5. 実例と例文
ここでは、場面別に3つずつ例文を示します。
1) 日常会話
- “I’m not a coffee lover as such, but I do enjoy a cup occasionally.”
- 「私はコーヒー愛好家というわけではないんですが、たまに一杯飲むのは好きです。」
- 「私はコーヒー愛好家というわけではないんですが、たまに一杯飲むのは好きです。」
- “He’s not my boss as such; he just oversees our team sometimes.”
- 「彼は私の上司というわけではありませんが、ときどき私たちのチームを監督しています。」
- 「彼は私の上司というわけではありませんが、ときどき私たちのチームを監督しています。」
- “There wasn’t a problem as such; it was more of a misunderstanding.”
- 「問題そのものがあったわけではなく、むしろ誤解があったんです。」
2) ビジネスシーン
- “We don’t have an official contract as such, but we operate under a mutual agreement.”
- 「正式な契約書はないのですが、双方の合意のもとで業務をしています。」
- 「正式な契約書はないのですが、双方の合意のもとで業務をしています。」
- “There is no deadline as such, but we expect the project to finish by July.”
- 「締め切りは厳密にはありませんが、7月までにプロジェクトを終わらせる見込みです。」
- 「締め切りは厳密にはありませんが、7月までにプロジェクトを終わらせる見込みです。」
- “She wasn’t assigned as a manager as such, yet she effectively leads the team.”
- 「彼女はマネージャーとして正式に任命されてはいないが、実質的にはチームを率いています。」
3) 学術的な文脈
- “The study did not focus on the psychological effects as such, but rather on behavioral changes.”
- 「その研究は心理的影響そのものではなく、むしろ行動の変化に焦点を当てました。」
- 「その研究は心理的影響そのものではなく、むしろ行動の変化に焦点を当てました。」
- “There isn’t a unified theory as such, but multiple perspectives can be synthesized.”
- 「統一理論そのものは存在しませんが、複数の視点を総合することはできます。」
- 「統一理論そのものは存在しませんが、複数の視点を総合することはできます。」
- “We do not regard these data as conclusive evidence as such.”
- 「これらのデータを、結論的な証拠そのものとはみなしていません。」
6. 類義語・反意語と比較
類義語
“in itself / by itself”
- 日本語: 「それ自体」「それだけで」
- “in itself” も “as such” と同様に「それ自体としては...だが」というニュアンスを強調する。文の構造によって置換え可能な場合が多い。
- 日本語: 「それ自体」「それだけで」
“per se”
- 日本語: 「それ自体」、「本来は」
- ラテン語由来の表現で、特に学術的な文脈で見られることが多い。
- 日本語: 「それ自体」、「本来は」
“thus”
- 日本語: 「よって」、「したがって」
- より論理的接続に重点を置くため、「as such」とは少しニュアンスが異なるが、補足説明的に使われる場合もある。
- 日本語: 「よって」、「したがって」
反意語
- 完全に「as such」の反意語にあたる決まり文句はあまりありませんが、あえて対極をとるなら “not necessarily in that capacity” などを用いて「そういうわけではない」と否定的に示すことがあります。
7. 発音とアクセントの特徴
発音記号 (IPA)
- [æz sʌtʃ](アメリカ英語 / イギリス英語 共通でほぼ同じ)
- アメリカ英語: 「アズ サッチ」
- イギリス英語: 「アズ サッチ」(ほぼ同じだが、母音などにやや違いがある場合あり)
- アメリカ英語: 「アズ サッチ」
強勢(アクセント)
- 特別な強勢はあまりなく、文中で “as such” がひとまとまりでさらっと発音されます。
- ただし、文章の強調として “AS such” と読み上げることも可能です。
よくある発音の間違い
- “az” のように濁らずに [æs] と発音しないようにする([æz] と濁る)
- “such” を “satch” [sætʃ] のように短くなりすぎないように注意
8. 学習上の注意点・よくある間違い
- スペルミス
- 「as such」を「as soch」や「as suck」と誤記する例。
- 「as such」を「as soch」や「as suck」と誤記する例。
- 同音異義語との混同
- 「such as」と「as such」を混同して使うミス(例: “I don’t see it such as a problem.” と書いてしまうなど)。
- 「such as」と「as such」を混同して使うミス(例: “I don’t see it such as a problem.” と書いてしまうなど)。
- 意味の取り違え
- 「as such」が「したがって」や「だから」と誤解されることもあるが、厳密には「~そのものとして」、「その立場において」というニュアンスなので注意。
- 「as such」が「したがって」や「だから」と誤解されることもあるが、厳密には「~そのものとして」、「その立場において」というニュアンスなので注意。
試験対策・資格試験(TOEIC・英検など)
- ビジネス文書や小難しい長文読解で出現することがあります。
- 文意をしっかり把握して直前までの文脈から訳すと、文全体を正しく理解できます。
9. 記憶に残るヒントやイメージ
- 「それ(that, it, etc.)を そうあるものとして 捉えたとき、〜」と思い浮かべると、“as such” の意味を理解しやすいです。
- ラテン語の “per se” とセットで覚えると、「本質的には」「それ自体としては」というニュアンスを掴みやすくなるでしょう。
- “such” を含む表現は類似表現が多いため、“such as / as such / as it were / as is”など、基本フレーズごとにまとめて覚えるのがおすすめです。
以上が「as such」の詳細な解説です。
文脈によっては「そういうものとして」「そのように」「それ自体としては」という微妙なニュアンスを上手に表す、大変便利な表現ですので、ぜひ繰り返し使って慣れてみてください。
意味のイメージ

意味(1)
そういうものとして, それ自体は
意味(2)
《話》 《not ...》正確(実際)には...などと呼べるものではない